東京風呂日和


Vol.1 佃・月島エリア「旭湯(2)」

img

銭湯から富士山が消える理由。

どぉーん。

浴場のど真ん中には、富士山が裾野を広げてそびえている。

銭湯には富士山の壁画というイメージが強いが、それはもう、ひと昔前の話。

最近はなぜかめっきり見かけなくなっていたので、ちょっと得した気分になる。


「風呂屋の壁画って、かなり少なくなってきているんだよね。

タイルの方が長持ちするし、手入れもラクだから」
というのは、旭湯のご主人である畑芳造さん。

壁画は2〜3年もすると湿気でボロボロになってしまうのだそうだ。

旭湯でも、2年おきに壁画を描き替えているという。


「やっぱり壁画の方がお客さんも喜ぶし、
タイルじゃちょっと味気ないからね」


潔い下町の湯に、悶絶。

いよいよ入湯。

ステンレスの桶でお湯を汲み取り、おもむろに掛け湯をザバーッ。

アチーッ!!さすが下町、江戸っ子の気っ風の良さをお湯にしたような潔い熱さである。

しかし、常連さんたちは何食わぬ顔でゆったりとお湯に浸かっていた。


よ〜し、こっちだって負けるもんかと、おそるおそる体を沈めると、お湯が肌を刺すようにジンジンする。

やっぱり、ちょっと熱いかも……。

でも、しばらくするとしだいに慣れてきた。

手足をゆっくりゆっくりと伸ばしてみる。

さらに肩の力を抜き、ゆらりとお湯に体を委ねる。

額から汗がジワジワと滲み出てきているのを感じるが、それが逆にストイックな感じで心地いい。

フーッとひと息つき、仰ぐように天井を見上げると、高い窓からはまだ午後の陽射しが差し込み、湯気と一体になってゆらゆらと漂っていた。

旭湯:中央区佃2-12-12
TEL.03-3531-6532


>1 >2 >3 >4
>>東京風呂日和トップ
湯の国Webトップ(mobile)
湯の国Webトップ(PC)

(c)Yunokuni Web