◆東京風呂日和◆
Vol.1 佃・月島エリア「旭湯(2)」
■銭湯から富士山が消える理由。
どぉーん。
浴場のど真ん中には、富士山が裾野を広げてそびえている。
銭湯には富士山の壁画というイメージが強いが、それはもう、ひと昔前の話。
最近はなぜかめっきり見かけなくなっていたので、ちょっと得した気分になる。
「風呂屋の壁画って、かなり少なくなってきているんだよね。
タイルの方が長持ちするし、手入れもラクだから」
というのは、旭湯のご主人である畑芳造さん。
壁画は2〜3年もすると湿気でボロボロになってしまうのだそうだ。
旭湯でも、2年おきに壁画を描き替えているという。
「やっぱり壁画の方がお客さんも喜ぶし、
タイルじゃちょっと味気ないからね」
■潔い下町の湯に、悶絶。
いよいよ入湯。
ステンレスの桶でお湯を汲み取り、おもむろに掛け湯をザバーッ。
アチーッ!!さすが下町、江戸っ子の気っ風の良さをお湯にしたような潔い熱さである。
しかし、常連さんたちは何食わぬ顔でゆったりとお湯に浸かっていた。
よ〜し、こっちだって負けるもんかと、おそるおそる体を沈めると、お湯が肌を刺すようにジンジンする。
やっぱり、ちょっと熱いかも……。
でも、しばらくするとしだいに慣れてきた。
手足をゆっくりゆっくりと伸ばしてみる。
さらに肩の力を抜き、ゆらりとお湯に体を委ねる。
額から汗がジワジワと滲み出てきているのを感じるが、それが逆にストイックな感じで心地いい。
フーッとひと息つき、仰ぐように天井を見上げると、高い窓からはまだ午後の陽射しが差し込み、湯気と一体になってゆらゆらと漂っていた。
旭湯:中央区佃2-12-12
TEL.03-3531-6532
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