◆東京風呂日和◆
Vol2.麻布十番エリア「麻布十番温泉(2)」
■密やかにお湯にこだわる
麻布十番温泉はビルの3Fにあり、1Fには同じ温泉源による銭湯『越の湯』がある。
1Fは3時からの営業だが、3Fは午前11時から営業しており、真っ昼間からの入浴が楽しめる。
決して新しいとはいえないが、妙に懐かしい感じのする浴室でゆっくりと過ごすうちに、なんだか肌がしっとりとしてきたような気がする。
「お湯がやわらかいでしょ。
これは温泉効果もあるけれど、沸かし方にもコツがあるんです。
うちは創業当初からずっと廃材を利用して沸かしてますから」
というのは、麻布十番温泉の社長である平岡千枝さん。
今でも毎日、ボイラー技師が釜の前につきっきりでお湯を沸かし続けているという。
「大変っていえば大変ですけど、やっぱりお湯は肌触りが命ですから。
こればっかりは変える気はありませんね」
■東京のど真ん中の、異次元
体が芯まで温まったせいか、なかなか汗がひかない。
吹き出してくる汗を拭きつつ大広間へ向かった。
ステージには『歓迎 麻布十番温泉』と書かれた垂幕(?)がかかり、カラオケセットとなぜか花笠が。
だだっ広い畳の間には宴会用の長テーブルがずらりと並び、ポットと茶碗が“ご自由にどうぞ”という感じで置かれている。
…ここは、本当に東京の真ん中なのか? と疑いたくなるような光景である。
が、気分は悪くない。
湯上がりの休憩を兼ね、畳にゴロリと寝ころんでうたたねしている人もチラホラいて、外界とは明らかに異質の時間が流れている。
遅ればせながら、うたたね組に交じって横になってみると、青い畳の匂いとサラサラと冷たい感触がなんともいえない。
夏休みに田舎へ帰省して昼寝しているような感覚に陥り、いつの間にかトロトロと微睡んでしまった。
麻布十番温泉:東京都港区麻布十番1-5-22
TEL.03-3404-2610(ヨレヨフロジュウバン)
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