◆湯煙コラム◆
■市川実日子(いちかわ みかこ)
家族とのしあわせバスタイム
1978年6月13日、東京生まれ。雑誌『olive』のモデルとしてデビュー。『CUTiE』『Zipper』『装苑』ほか多くの雑誌に登場したほか、CMでも活躍。
また女優としても、数多くの映画作品や人気テレビドラマ、舞台などに出演。安藤尋監督の「blue」で、第24回モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞。今年公開された「レンタネコ」はベルリン国際映画祭に出品された。
「レンタネコ」公式サイト
私は洗濯や食器洗い、観葉植物の世話など水をあつかう家事が好きです。水が身体に触れると、気持ちが引き締まったり、心が安らいだりします。お風呂も同じで、お湯に浸かった瞬間、張り詰めていた気持ちがふっと切り替わる感覚を楽しんでいます。
バスグッズや入浴法にこだわる方ではありませんが、以前、バスルームに檜(ひのき)でできた「すのこ」を置いていたことがあります。一人用の小さなすのこでしたけれど、バスルーム全体にヒノキの香りがただよい、とてもリラックスできました。なぜすのこを置いたのかあらためて考えてみると、その当時のお風呂はプラスティック製のユニットバスだったので、人工素材の空間へ自然のあたたかみを取り入れたかったのかも知れません。
私はたまにお風呂空間を意識するブームがまわってくるようで(笑)、灯台の形をしたキャンドル入れからのやさしい灯りでバスルームを満たしていた時期もありました。
実家のお風呂に入っていた、しょうぶ湯やゆず湯などが忘れられなくて、その季節にお店で見かけると今でも必ず買っています。小さいころは、お風呂で二人の姉とじゃれあって毎日を過ごしていました。よく覚えているのは、一番上の姉が浴槽のコーナーに座り、私がおしりを押しつけるという遊び(笑)。「もう〜、実日ちゃん!」なんて大笑いしながら、毎夕みんなで仲良くお風呂に入っていました。こんな時代のことは、たとえばタオルで風船をつくったり肩までお湯に浸かって10数えてから上がったりという、なんでもないちょっとした瞬間がいつでも楽しいシーンとして思い出されます。お風呂上りにはすでにお布団が敷いてあって、またそこでも一騒ぎ。押入れから布団に向かってピョーンと飛び降りたりして遊んでいました。
祖父母の家でも、お風呂にまつわる思い出があります。自宅と別のところに店を持っていた祖父母は、店にいるときちょっとした家事などができるよう、建物の2階に小さな台所とトイレ、そして部屋の一角にちょっと深めのタイルの洗い場を用意していました。私が遊びに行くと、そのタイルの洗い場は浴槽に早変わり。いつもと違う特別な場所でお風呂に入れてもらえるのにワクワクしました。むかしながらの小さい丸い黒っぽいタイルがかわいくて、子ども心にもその雰囲気が大好きでした。いまの住まいもタイル貼りのバスなので、不思議とタイル製に心惹かれるのは変わっていないようです。
こんなにお風呂好きだった子ども時代なのに、今は眠さに負けてしまってなかなかお風呂そのものをゆっくり満喫できていないことが、ちょっとした悩みだったりもします。でも、お風呂の楽しさや心身に与える効果はよく分かっているつもりです。これから寒くなる季節ですし、自分の身体へのその日1日の感謝のつもりで、バスタブであたたかなお湯に包まれながらぼーっとするひとときを意識して作っていきたいですね。
文/市川実日子(いちかわ みかこ)
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