◆湯煙コラム◆
■青山草太(あおやま そうた)
五右衛門風呂は家族の絆
1979年9月17日生まれ。
モデルとしてデビューしたのち、2003年に俳優へ転向。舞台・ドラマレギュラー出演を経て、2005年『ウルトラマンマックス』の主人公トウマ・カイト役に異例の監督指名で抜擢され出演し人気を博す。現在もテレビ、映画、舞台などで幅広く活躍中。
特技は殺陣とリフレクソロジー(足ツボ)。趣味はフライフィッシング、登山、ロッククライミング。
青山草太オフィシャルブログ
みなさんは、「五右衛門風呂」の焚き方を知っていますか?丸くて大きな釜の浴槽に水を溜め、室外の焚口から槇(まき)をくべてお湯を沸かして、足の裏をやけどしないようスノコを沈めて入るのです。
僕の地元である島根の祖父母の家は、こんな五右衛門風呂でした。両親が新しい家を建てるまでは、僕も毎日その五右衛門風呂に入っていました。本当に手のかかるお風呂で、ぼくと祖父が入るときは、その間ずっと祖母や母が焚口で火の番。外から「湯加減はどう?」と声をかけてもらいながら、熱かったりぬるかったりする温度を調節しなければなりません。何度も沸かすわけにはいかないので、お風呂に入る時間は必ず家族みんな一緒でした。ボタンひとつでお湯がわく家庭用のお風呂に慣れている方には驚きでしょうが、当時の僕の家ではこれが当たり前だったんです。
こんな風に、小さいころお風呂も寝るのも一緒だった祖父は、地元の農村歌舞伎「むらくも座」で指導をしていました。農村歌舞伎とは、役者も裏方もふだんは農家や市役所職員、お店の経営者といった本職が別にある、地域の人々で運営する歌舞伎です。公演ごとに集まって稽古を行い、出し物は有名な古典から新作までさまざま。僕も子役として舞台に立っていました。その頃はまだ、将来プロの役者になるとは思ってもいませんでしたが、舞台の上から見えるお客さんたちの笑顔が子ども心にとてもうれしかったことを覚えています。そう考えると、ここが僕の俳優人生の原点なのかもしれません。
そんな田舎育ちでしたから、都会の生活には人一倍憧れがありました。東京に住むなら、フローリングのマンションに、シャワ-付きユニットバス。しかもなぜか「泡風呂」というイメージでした(笑)。実際に上京してしばらくは、シャワ-生活にハマりましたが、そのうちやはり、湯船にしっかり浸かった方が、翌朝の疲れの取れ方が違うことに気づきました。
さらにリフレッシュしたいときには、温泉へ。釣りと山登りが趣味なので、帰りがけに現地の温泉へ立ち寄るのが楽しみなんです。都心では見かけない素朴な温泉や露天風呂などが、疲れを心地よく癒してくれます。温泉で出会う人同士で、その日の釣りの成果を披露したり、穴場を教えあったりと、情報交換の場になっているのもいいところです。その場では誰もがつかの間の休息を求めて集っているわけですから、いつでもやさしい空気が漂っているのも気に入っています。
たいていの人々にとって入浴とは「入らなくちゃ」ではなく、「入りたい」という自然な欲求で行う、能動的なものだと思います。お風呂に入るということはそれだけ心地よく、しかも自分のためになることを身体がおぼえているのでしょう。近頃はそういう「〜したい」という気持ちの大切さを感じています。仕事でもプライベートでもそんなふうに自然と湧き出てくる前向きな思いを増やし、さらに行動力に満ちた自分へと高めていくのが、いまの僕の目標です。
文/青山草太(あおやま そうた)
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