◆湯煙コラム◆
■安藤サクラ(あんどう さくら)
「いざ公衆浴場。脱衣所で脱ぐのは「服」と…?!」
安藤サクラ(あんどう さくら) profile
1986年東京都生まれ。奥田瑛二監督作『風の外側』(07)のヒロイン役で映画デビュー。園子温監督『愛のむきだし』(09)では、2009年:第31回 ヨコハマ映画祭 助演女優賞受賞アジアン・フィルム・アワードにノミネ-トされた。『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』と『SRサイタマノラッパ-2女子ラッパ-☆傷だらけのライム』で、2010年:第84回 キネマ旬報ベスト・テン 助演女優賞受賞。父は俳優で映画監督の奥田瑛二さん、母はエッセイストで評論家の安藤加津さん、姉は映画監督で作家の安藤モモ子さん、夫は俳優の柄本佑さんという芸術一家。
最新作は8月4日(土)公開『かぞくのくに』。
映画『かぞくのくに』公式サイト
実家は父を除いて女ばかりの、女子率が高い家庭でした。しかもわが家はみな仕事をしていて、それぞれ翌日の予定もあるため、バスルームを使いたいときにはまず家族に「お風呂入っていい?」とお伺いを立てるのが日課でした。するとたいてい母や姉から、「あ!いま私が入るところだからダメ」などと返事が返ってくるわけで、いつも夜はお風呂の順番をめぐる攻防が繰り広げられていましたね。
結婚してからは、気兼ねなく好きな時間に入れるようになりましたが、同業者である夫は「お風呂はただ体を洗うだけでなく、じっくり汗をかいて新陳代謝を促すべし。」と考えるフロプロフェッショナルタイプ。だから撮影中で忙しいときほど「ちゃんと半身浴するんだよ!」と言われたりして、私の人生は、どうにもお風呂に厳しい人といっしょになっているみたいです(笑)。でも半身浴をするようになったおかげで、夫に薦められるマンガをちびちびと1章ずつ読んで、ついに長編を読み終えたばかり。バスルームでの新しい楽しみが増えました。
お風呂の楽しい思い出はいっぱいです。小さいころ、湯船に座った祖母のお腹に乗り、ゆ〜らゆ〜らと揺れてもらう遊びなんて特に好きでした。祖母の肉付きいいお腹と波が、何とも言えない心地よさだったんです。また父と入るときは、大きな手でタオル風船を作ってもらうのを、いつも楽しみにしていました。いい匂いがするきれいな色のシャンプーやボディソ-プを桶のお湯に溶かしては「はい、ジュ-スですよ」と、独り遊びをして、母に「これ、高級品なのよ!」なんて、あとから叱られたりもしましたけど。
家族とは大きくなるまでみんないっしょに温泉に入っていましたが、大人になり、仕事関係の人と「裸の付き合い」をするのは、実はちょっと照れくさいです。ロケ先の宿が大浴場になっているときは、なんとなくコソコソしながら入浴しています。それでも"公衆浴場"ですから、脱衣所では「よし!」と心を決めて、浴場へと足を踏み入れます。
いったん照れを捨ててしまえば、現地のおばちゃんと同じお風呂に浸かりながら「お嬢さんどこから来たの?」「東京からです〜」なんて気軽な会話をして、いつもと違う気分を楽しんでしまいます。
そんな私がハマっているのは、お風呂上りにタオルで背中や腰回りをパンパンたたくこと。はじめはオッサンがやることだと思っていたけどやってみたら気持ち良かった!(笑)程よく水分を吸ったタオルがピシっと肌に当たると、瞬間的に風が起きて涼しくなるんです。これを姉に話したら、「そんなこと恥ずかしげもなくできるのは、私の小説に出てくるおじいちゃんだけだよ」とやっぱりあきれられてしまいましたが、夏だと特に気持ちいいんですよ!もちろん肌の弱い方にはお勧めしませんが、「気持ちいい」はいくつあってもうれしいし、年齢や性別など関係ありません。みなさんもぜひ一度、お試しください。
文/安藤サクラ(あんどう さくら)
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