湯煙コラム


■中村江里子
「あ〜日本にいるんだあ」


中村江里子

朝からやむことなく続いていた子ども達の家を駆け回る音、泣き声、嘆声、笑い声・・・・・。

ようやく家の中が静かになった夜、ゆっくりと湯船につかると心の底から「いいなあ」と思う。

そして「あ〜日本にいるんだあ」と思う。


仕事を兼ねて、3歳の娘と2ケ月の息子を連れて日本に来ている私の滞在先は実家。

今回は、私達の他に妹も3歳と8ケ月の二人の娘を連れて実家に来ていたので、家の中は大変な騒ぎ。

でも、久しぶりの大家族の生活は、慌しいけれども楽しいです。

子ども達のものすごいエネルギーに振りまわされながらも、穏やかな時間が過ぎています。


そして、今回娘にとっても大きな進歩がありました。

それは、ようやく娘が日本のお風呂を好きになってくれたことです。

これまでに何度も日本に来ていて、実家に滞在していましたが、何故か、お風呂を怖がっていたのです。

パリでは、お風呂が大好きなのに・・・・・。


どうやら見馴れないお風呂場の様子に戸惑っていたのでしょうね。


ご存知の方も多いと思いますが、欧米のバスルームには洗い場がありません。

体を洗ってから湯船に入るということがありませんから、娘にとっては不思議な感覚だったのでしょう。

でも、今回は、姪も一緒にお風呂に入って「こうやるのよ」と見本を見せてくれたせいか、日本に着いて一週間経った今、「お風呂の時間よ!」と言うと、喜んでとんでくるようになりました。

私か妹が子ども達と一緒にお風呂に入っているのですが、これもパリでは出来ないことです。

皆で湯船につかりながら歌を歌ったり、遊んだり、1から10まで数えたり、私の子供の頃を思い出しました。


以前、日本に一年程住んだことのある私のパートナーも、日本のお風呂が大好きです。

その当時、彼が住んでいたマンションでは、スイッチを押すと湯船に適量のお湯が入り、しかも温度も自動で調節してくれる機能がついていたのですが、いまだにフランス人の友人達にその話をしています。

そして、日本での生活がきっかけで“お風呂で体をあたためる”ことが好きになったようです。


いつか、パリに、または田舎に家を購入することができたら、大きなバスルームに洗い場と大きなバスタブを置いて、日本のように湯量や温度を調節できて、24時間いつでもお風呂に入れるような機能を付けてお風呂の時間を楽しみたいね、と常々話しています。

お風呂に入るというのは、体を清潔に保つということだけではなく、心身共にリラックスしたり、また家族とのコミュニケーションをとるのに最適の場所でもあると思うのです。

せっかく日本のお風呂を娘が好きになったのですから、その楽しさを忘れてしまわないうちに、また日本に戻ってこなければ・・・・・。

(文:中村江里子)

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